娘

親の顔ではなく、友達に会いに帰省していた娘。

美容師の下積み時代はいろんな意味で厳しい。

何も私と同じ道を歩むことないのに、と思いながら色々聞いてみても、

「大丈夫、問題ない」

としか言わない。そんな娘を見て、

３０年前、美容師を志す者は必ず通るのだが、あまりの手荒れに、

「これは親が見たら心配する。この手は見せられない。」

と、帰省を断念した、あの美容師１年目の冬を思い出した。

お正月三日間、コンビニのパンと牛乳で過ごしたあの冬、それでも悲壮感など全くなく、まだペーペーのくせに自分のひび割れた手を見て、美容師のはしくれになった気がして、少し嬉しかった。


同期の仲間がいたから、夢があったから、支えてくれる人がいたから、ここまで来れた。

遠い将来、娘もこんなふうに思える日がくることを祈って、空港のゲートで娘に手を振った。