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精神的労働2

仕事柄、多種多様な方と接する。

美容師として一番大切なのは、その方がどういうふうなスタイルにしたいのか、交わされる会話の中で、すばやく、かつ正確に感じとらねばならないことだ。

そういう意味では、我々美容師には国語力も必要だ。

そのお客様は、20代で髪は腰までのロングヘアーの方だった。

今日はどうなさいますか?

「私、太陽みたいにしたいんです。」

太陽って・・・・・あの・・・

「私、太陽が好きなんです。だから太陽みたいにしたいんです。」

(布団にもぐりこんで出てきたくない心境になったが、でも大切なお客様だ、頑張れ私!)

太陽・・・ウン・・いいですよね、明るくて・・・アノゥ、太陽の特にどこらへんがお好きなんですか?

「まあるいとこです。太陽みたいに丸い頭にして下さい。」

そこで私の頭にパッと浮かんだのが、スキマスイッチのホラあのアフロの方の、あの頭だ。

でもそのお客様は、ちがうと言う。

そりゃあそうよねぇ、20代の若い女の子がアフロヘアーにしたいわけないよなぁ。

どのヘアーカタログを見せても、「これは太陽じゃない」、の一点張りだ。

弱った私は、ノートと鉛筆を持ってきて、どんなヘアーなのかを描いてもらうことにした。

出来上がった絵は、「太陽、太陽」言うだけあって、太陽の絵そのものだった。

髪は切りたくないという。

なんとなくわかってきた。

その人は、太陽みたいな人、になりたいのだ。

朗らかで、陽気で、誰にでも暖かく、そんな人になりたいのだ。

私は、私もこの世界中のみんなもアナタと同じように太陽に憧れてるし、そうなれるよう毎日努力してる、という意味のようなことを、ベラベラとしゃべりまくった。

結局そのお客様は私と1時間ほどおしゃべりして、お帰りになった。

美容師は技術職であるが、カウンセラーの役割もたまにする。

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精神的労働

仕事柄、多種多様な方と接する。

どう見てもうちは本屋には見えないのだが、中には来店したかと思うと、置いてある雑誌をフンフンと見て歩き、気に入った?雑誌を胸に抱えて、千円札をペシッと置いて帰る人もいて、仰天してしまう。

そして、一本の電話。

「大変なんです!、昼寝から覚めて鏡を見たら、誰かが勝手に私の髪の毛をグシャグシャにしてるんです!昼寝をする前まですごくキレイだったんです!どうしたらいいですか!?」

いや、本当にあった電話ね、コレ。

そしてこれはつい最近

「あのー、今日浴衣を着るんですけど、頭をセットしてもらえませんかねぇ?できたらタダで・・・」



美容師は精神的にもタフでなければやっていけない・・・。

バカタレ

恐ろしく暑かった8月も、もう終わる。

一ヶ月は帰省してたはずなのに、3日くらいしか顔を見なかった息子も、また東京に戻って行った。

部屋に着いたら連絡せよ、と言ってたので夜になってから、一通のメールがきた。

「家族のありがたみがわかりました。感謝してます。どうか体に気をつけて。」

というメールを期待していた

が、実際に来たメールは
 
「電気もガスも水道も止まっとる」

何ですと?

どういうこと?

「5月から払ってねー」

はい?

「明日全部の金額調べるから、振込みよろしく」

公共料金踏み倒すような息子に育てた覚えはないぞ。月にかわってお仕置きじゃ、一ヶ月そのままでおれ~!

この大バカタレに塗る薬をお持ちの方、どうかご一報を!!



Kさん

本日のお客様Kさんは、5月に住み慣れた大阪から、老後は生まれ故郷で過ごそうと、この5月にこちらへ引っ越して来た方だ。

昭和8年生まれの、74歳。

もう一度言う、74歳だ。

「いやぁ~、もう田舎の人は動作が遅うてイライラするわー」

「ここらへんは、スポーツクラブがないねんなぁ。エアロしてバイクこいで、サウナ入ったらキモチええでぇー」

「タイガースの中継が全然ないから、おもろないわぁー。昨日六甲おろし聞いてたら涙でてきてん。」

実にパワフルで、大阪弁の軽快トークは続く。

「海外にはまだ7回しか行ったことないねん。」

「旅行は友達と行くもんやがなぁアンタ、旦那とかと一緒やったら、家におるんと同じやがな。旅先でもパンツ出したり世話やかなあかんやん。いや~そんなんごめんや。」

ふむ、言われてみればまさにそう。

「親戚がこっち帰ったらどうや?って言ってくれるもんやから、そんならって冗談で家を売りに出したら、それが3日で売れてなぁ、ホンマに帰らんならんようになってん。」

ジ、ジョーダンで家を売りに、ですか・・・

「ここらへんで、ランチできるとこないのん?」

う~ん、ランチねぇ・・・・

「年寄りが、だ~れも歩いてないねんけど、おらんのかな?」

い、いえ、年寄りの町ですから、たくさんいると思いますけど・・・

「ぜんぜん見かけへんのやけど、家で何してるのん?」

何って・・・・ジっとしてるんじゃないですかね・・・・

「いや~、年寄りくさいわぁ」

あっ、そうそう、ゲートボールなんかで集まってるんじゃないですかねぇ・・

「ゲートボール??そんな年寄りみたいなこと、しとうないわ、イヤやわ~」

(年寄り、年寄りって、アナタも74歳じゃあ・・・・・)

ブローの仕上げも終わって、お帰りになる時、

「なんでこんなに安いのん?いや~ワルいわぁ、大阪で行ってたときの半額やん。いや~ワルいって。」

いえ、いえ、ここは大阪とちがいますから・・

「ホンマにこんな安うてええのん?」

ええのん、ええのん、ホンマにええのんよ

「ほんなら、そうさせてもらうわ~」

気にせんといてや。

「ホンマにありりがとうな。また来さしてもらうわぁ。」

気いつけて帰るんやで~~~




Fちゃん

本日のお客様Fちゃんは、トリニータの大ファンで、ホームでの試合観戦は欠かしたことがないそうで、私より二つ年下だが、考え方も容姿もとても若々しい。

実はこのFちゃん、休みの日には少し遠くの道の駅なんかに、ナナハンに乗ってアイスクリームなんかを食べに行ったりするのだ。

実にカッコイイ。

二つしか違わないのに、Fちゃんは自分の人生を生きてる感がある。

Fちゃんに、何か趣味はないのか、と問われ力なく首を横にふる私。

「趣味がないのよー、時間がなくてね・・・」

Fちゃんは、ジッと私の目を見て、

「40歳過ぎたら、自分の為に時間使って、自分の為に生きていってもいいと思うよ」。

ズシリと胸に響いた。

かといって、これという趣味もない。行きたいとこもない。欲しい物もない。

やべー・・・・私って、超つまらん人間やん。

そんな事を、次のお客様と話してたら、

「好きな仕事ができて、その仕事が充実してて、これ以上何か望むとバチがあたるよ」

と言われて、妙に納得した私であった。


  

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